マイ365プロジェクト「短歌としつもん」

FBで発表しています「これまでの人生の中で詠った歌や新作のオリジナル短歌365首と魔法のしつもんのコラボ」というマイプロジェクト

夏の短歌・・・マイプロジェクト365より

2019年6月

1日 夏近し新茶の香りの青々とサワーなる味わいひと時憩う

2日 君想う心静かに変わりゆく紫陽花の花よりもやさしく

3日 好きという気持ち遥かに拡がりて吾の本音は青葉に溶ける

4日 沈む陽と昇る月とのすれ違う世に生き君に逢うは運命か

5日 きゅるるりと水茄子割けば紫に染まる指先また夏は来ぬ

6日 電車にてリクルートスーツの一団と乗りあわす午後少しけだるく

7日 寂しさをやさしく溶かす物語り二人の距離を運びし小舟

8日 哀しみをやさしさにするコツを知る静かに明ける初夏(はつなつ)の朝

9日 私をやさしくする人一人いて哀しくさせる紫陽花の雨

10日 雨の降る真近かの空の昼下がりパステルカラーに私は変わる

11日 夕闇に恋する蛍飛び交いて想いはかなき水無月の寺

12日 誰がためにサムライウーマンという名のトワレ香らせて行く梅雨最中

13日 日々IFを問うを愚となし夢も見ず生くるに少し若くてありぬ

14日 偽りを人の為と書き人の夢を儚いと読む真理なるかな

15日 通学の子らが寄り合う傘の列雨に騒げる紫陽花に似て

16日 吾もまた宇宙(そら)より降りし旅人とたまゆらの命であらば角も曲がらん

17日 幾人も人と出会いて帰る道信号待てばつばくらめ飛ぶ

18日 若きらの声を聞きつつ講義終え坂を下れば紫陽花は笑む

19日 夏めきし陽射しを避けて路地裏に咲きて涼しきどくだみの花

20日 見事なる南高梅の実を漬けて母を思えり深夜の厨

21日 城崎は何をくよくよ川端柳竜馬も同じ湯に浸かりしか

22日 空に星地上に蛍追いかけてまほろばの野を迷い彷徨う

23日 同級生の訃報は夜空を駆けぬけて歎き尽きせぬ一年五組

24日 紫陽花の移ろうごとき人の身を淋しくなきかと日暮れ問いおる

25日 青空に入道雲は真白にてこんな夏には嘘はつけない

26日 それぞれに重荷背負いて生きる身ぞ励ましあいて生きるよりなし

27日 ボーッとする時間もないとあかんよと諭されておりぬずっと年下に

28日 ほとほとと夕べさみしく佇めば夥しくもりょうぜん花落つ

29日 雨近しどくだみ草は香り立つ染料臭立つ工場の隅

30日 人亡くす哀しみに増すことありや団塊世代吾の水無月

 

7月

1日 雷鳴に清しきものの胸に湧き雨中を駆ける衝動となる

2日 雨粒の混じりし風のねっとりと髪に纏わり鬱々と梅雨

3日 酔眼で見上げる夜空に輝くは少し欠けたる橙の月

4日 降るのかな晴雨兼用傘さしてどっちつかずの雨と心中

5日 北の天心星ひとつ目当てにてこの世の迷路旅を続ける

6日 またやってしまった私の空回り君は笑うけど会わす顔なし

7日 天の川七夕の夢に現れし綺羅星ふたつ父母の星

8日 辻つじに囃子の音を聞きながらそぞろ歩けばわがノルタルジィ

9日 起きること全てに意味があることを知らずに過ごす時間の狭間

10日 北で飲むコーヒーの香りの馥郁とあまやかに濃く満ち充りていく

11日 月光をひたひた浴びて川の辺に蛍を追いし北の宿なり

12日 ふらり旅引き寄せられて佇むは北のまほろば奇蹟の遺跡

13日 意のままにならぬ魂の容器なる脆き現身(うつしみ)吾にもありき

14日 言ったよな言わないような寂しさをかみしめ歩く今日も雨降り

15日 さるすべりうす紅雨に濡れながら妥協すること娘に説きおり

16日 決断は保留のままの自己矛盾紫に染まる残業の部屋

17日 携帯を通し聞こえし蝉の声都会の街路樹住み易すかりや

18日 雨だから肩よせ歩ける傘の中半径50の二人の世界

19日 繁華街の古きバーにてカクテルを飲みて語りし嘘と本当

20日 朝餉前時を惜しみて逍遥す川は流れて問うこともなく

21日 愛すれど菩薩のごとくもほどほどに我が名哀しき普通の女

22日 夏休み入れどリュックを肩に負いて幼なは通う留守学級に

23日 出会いても一期一会と散る花か留学生に和を伝えおり 

24日 雨上がり眩しさに目を細めつつ見上げる空に笑う向日葵

25日 梅雨去りて夏雲湧くを見上ぐればそぞろ恋しき稜線の風

26日 夏盛り茄子に胡瓜にゴーヤもやし野菜ばかりが並ぶ食卓

27日 繰り返し木槿は開き累々と花を落として夏を越えゆく

28日 ひと時を包まれいたり深々と横で眠りし幼き寝顔

29日 異文化であれば浴衣を着てはしゃぐ若きら真夏の日輪の中

30日 母逝きて夢にも逢わず夏盛りノウゼンカズラ散りしきるなり

31日 パラソルを透せし炎暑逃げ来れば路地に玉響風の吹き過ぐ

 

8月

1日 夏バテを乗り切る昼餉の定番は水なす漬と冷たいソーメン

2日 夏空に湧きたつ雲よ青き峯よ吾を呼ばしむここに還れと

3日 散りゆける花火よ笑えわが裡の優柔不断意志薄弱

4日 暑かった一日の終わり鋭角に熱演保ち陽が落ちていく

5日 天涯に清らに咲ける花のあり君に見せたきキレンゲショウマ

6日 絶え間なく哀しみのうちに生きるとも命あればの今日原爆記

7日 身うちより旅への憧れ湧き出づるゆくえ定めぬ夏雲の峰

8日 苦があれば楽きっとあり我が登る道にはきっと花が微笑む

9日 真夏日の道にくっきり記されし影を揺らして鐘の音は響く

10日 ヒマワリとブーゲンビリアにハイビスカス真夏真昼の三重奏かな

11日 山靴に伝わる大地踏みしめて朝明間近に吾出発す

12日 励まして生きん思いを深く持ち流れる星を独り眺むる

13日 吾愛し母の愛した白山の弥陀ケ原いま花の楽園

14日 信仰の山に咲きいしイワギキョウ紫ゆかし雲上に冴ゆ

15日 クロユリは室堂下部に群れ咲くと母言いおりしそに佇みており

16日 喘ぎつつ見上げる吾を驚かすクルマユリ朱く群れて咲きおり

17日 盆明けのけだるき身内励まして仕事の山を片付けていく

18日 踏み入りて容易くは抜けられぬ人の心の荒野に触れて

19日 願うほど責めては余る思いあり言葉は無力越えられぬ壁

20日 わが望みそこにあるのに掴めない「たら」「れば」ばかり繰り返す

21日 すぐ答出したい性を直さなきゃ思う後から追求してる

22日 捨てきれぬ一縷の望み追いかけてなお離れてく夢と現実

23日 つかぬよに離れぬようにただそっと君へと届く風になりたい

24日 仰ぎ見る今宵の月のよそよそし足元ばかり気にせしひと日

25日 君からは離れることのできぬまま梓川より穂高を仰ぐ

26日 上高地幾度通いし山の道風の声聴き森の声聴く

27日 稟として透きて清らな梓川わが哀しみは無心なる蒼

28日 湧き上がる雲の白さよ蒼空よ穂高の峰よ立ち去り難し

29日 暗闇に迷いし五十路の青嵐に吹かれて山に登り続ける

30日 君に逢い得た喜びの数ほどに街に溢れる光の洪水

31日 本すらも読まず余裕のなき日々と書店で気付く夏も過ぎ行く