マイ365プロジェクト「短歌としつもん」

FBで発表しています「これまでの人生の中で詠った歌や新作のオリジナル短歌365首と魔法のしつもんのコラボ」というマイプロジェクト

春の短歌・・・マイプロジェクト365より

2019年3月

1日 沈丁花霞かな香り漂いぬ止まる間もなき暮らしにありて

2日 久々に方代歌集開けたり君覚うるや放浪歌人

3日 春の雨避けて入りし甘味処雛は由しく飾られておりぬ

4日 映画観たその夜の夢は最果ての見知らぬ海を舟で漂う

5日 かなしみは人の心の夜叉ならむ荒野にひとり佇むばかり

6日 真実は雨に打たれて怨むごとハナニラはひそかに咲けり

7日 出勤の朝の出がけの足留める薄むらさきの豌豆の花 

8日 吾が頭悪さを憂しと思う日は書店の本を端から読みたし

9日 気がつけば吾やわらかに眠りたり旅の疲れを「ひかり」は乗せて

10日 いもうとは受け入れていると言い放つ笑顔よきまま季節よ廻れ

11日 生きること切なき故に愛しいと思ふ今日は震災八回忌

12日 無私となり大切な人守れるや我が十字架は解けることなく

13日 古都の夜を焦がして走る大松明あれより火車は吾が身にありぬ

14日 季は移り修二会の春は巡りきて夜空を焦がす火の粉思えり 

15日 夕ざれば数字かすめどやらなけらゃ終わることなき決算業務

16日 俯かず真っ直ぐ歩けば日溜まりの中で微笑む君に会えるや

17日 この頃のやりきれなさを持て余し春雷響く窓際に寄る

18日 彼岸西風(ひがんにし)くぐれば春のただ中か吹き荒らぶれて出勤急ぐ

19日 くもりなき弥生の空は拡がりぬ君に届けよ感謝の思い

20日 年度替えシュレッダーする書類には見覚えのある筆の跡あり

21日  まったりと春の気配の立ち上がる朝は焦げ気味トーストに紅茶を

22日 大蒜と五種類のルーでカレー炊き満たされているそんな日もありき

23日 ダイアリーに走り書きあり将来から見たなら今が一番若いと

24日 パンクした自転車曳いてる朝の道ついてないけどまだ雨は降ってない

25日 目を細めひかり縞なす朝を行くうらら春風受け止めながら

26日 交差点歩幅を広く歩き行く運も不運も心のままに

27日 海沿いに走るローカル線の旅急行待ちする菜の花の駅

28日 悔いなしと清々しくも言い放つ吾が慕いし人は定年迎う

29日 春色のセータールージュパンプスで君に逢いたしああ春よ春

30日 君も吾もさびしい駅に時々は来て眠るなり空壜のように

31日 君と会う今日暖かしこんな日は桜色したコートに着替えて

 

4月

1日 入社式テレビ報道に映さるる若きらに思う今日よりは跳べと

2日 陽にとける桜並木の下通るうす青く見ゆ白きブラウス

3日 照り翳る空にあやうく紛れむか桜はすでに淡きさくら色

4日 花見する桟敷に並ぶ重箱に小芋の煮付けが輝いており

5日 露天風呂夜桜あかりにほんのりと吾のからだの輝くを見る

6日 花曇る朝の光の中をいくばば孫旅のローカル電車

7日 こでまりを手折りて挿せばそこだけに春の光は眩ゆく照りぬ

8日 吹き募る風に捲かれて舞い上がる妖精のごとき淡き花びら

9日 風のいろ花の動きのやわらかく今目の前を散りゆくさくら

10日 大切なものを忘れてきたような桜に青葉混ざる頃なり

11日 夢のよにぽわんぽわんと揺れる紅(こう)綺羅を散らせて魂を呼ぶ

12日 それ以上言わない人となにもかも聞きたい私散りゆくさくら

13日 みずからの命ふるわせ散り急ぐさくらくらくらその彩哀し

14日 桜から葉桜までのつかの間を逃すまいとて追いつかぬ日々

15日 桜色染まる街路を見つめつつ無口になりぬ雨降りやまず

16日 桜への未練たっぷり毎年の習いとなりし花追いかけっこ

17日 咲きて散る桜のごとき出会いなり異国の子らのディテール忘れず

18日 この国は礼重き人住みたるやとつくにの人に学びておりぬ

19日 人生の景色移れどほろ苦き居場所はいつもこの四畳半

20日 早足で移ろう季節ただ中で取り残されてハナミズキ満つ

21日 有終を飾るがごとく桜散れかささぎの橋となると決めた日

22日 春風に誘われて出る昼休み花屋と本屋のいつものコース

23日 平成に生まれし子らの哀しみは平和の御代に平和を知らず

24日 妖精の羽かカタクリ咲く谷にやはり戻ろう日だまり求め

25日 青嵐吹き抜ける森逍遥すショウジョウバカマ彩に咲きけり

26日 凛として媚びず健気でけがれなき山の桜を吾は愛しむ

27日 新緑の山は4月のファンタジィーさやけき音を奏でる楽器

28日 若葉風抜け行く駅のカフェテラスランチ待つ間にゆるり本読む

29日 若葉雨物憂き午後をパソコンに向かいて聴けるドリームカムツルー

30日 よく生きることはシンプルに生きることうっかり忘れる日々の複雑

 

 

5月

1日 ひと仕事終えて一息ジャズを聴く夢とライブを行きつ戻りつ

2日 つわ蕗をむけば春の香かつんつんす小さきゆうちゃん現れる宵

3日 若葉より漂う香りすくいあげ朝のペダルは軽やかなリズム

4日 パソコンの待受画面変えてみたツツジ青葉と春を競えり

5日 読みかけし青春の日の物語残りのページを気にしつつ読む

6日 駅まではミストシャワーの雨の中細胞深部へ潤いていく

7日 喘ぎつつ自転車漕げば坂道を燕はすいと追い越していく

8日 追わるよに仕事あるのもよしとせんいずれ時間も余まる日は来る

9日 みずみずと緑さやけき南禅寺記憶はやがて光はじめぬ

10日 パラソルで陽射しを避けていく吾に纏わるように揚羽蝶舞う

11日 地上の星ハナニラの花が庭の隅ひっそりと咲く小さな宇宙

12日 人間とはどうしてこうも優しいのか一杯のコーヒー味わいて飲む

13日 理不尽と思われること四つありき耐えて勤めし吾を誉めよう

14日 青空にスポーツクラブオープンの幟はためく工場跡地に

15日 ふつふつとオタフク豆を塩茹です万緑の里厨に拡がる

16日 初夏に向かう風を追い越し東へと列車は走る君を乗せて

17日 つめくさのコンクリートより咲けるのを日盛りに佇ちて愛しく見つ

18日 天界の扉開かるウエサク祭鞍馬の東満月は輝る

19日 人生はだましだましでいきましょかいつかは終わるしゃあないもんね

20日 この道を選んで今朝も歩いてる淡きピンクの薔薇薫る五月

21日 真実を測りあぐねし朝の時嘘つくことも愛のうちかと

22日 照るでなく曇るでもないブルーグレィ風よ運べよ翠(みどり)の五月

23日 そのうちに何とかなるで生きてきてそろそろやらねばタイムオーバーせり

24日 たまゆらのライトに浮かぶ横顔をそっと見ている深夜の車中

25日 目を閉じて詩語り聴けばエクランに収まりし玉ひそと輝く

26日 絵心も歌の心も誘われて吾は皐月の空に遊びし

27日 はつなつの空を見上げて溜め息す受信メロディ変えてみようか

28日 みどり雨比叡の里の山門に額絵のごとく琵琶湖収まる

29日 夏ものの学生服から出た腕の寒そに見えて日照雨(そばえ)降るなり

30日 恋しかる九重の山に幾たびぞミヤマキリシマ山萠ゆるらし

31日 走り梅雨油古びしキャンバスの臭いこもりて筆置きし頃